好・典・然 ふっかもふ。

kou10nen.exblog.jp

ふっかもふな日常。

ブログトップ

[研]佐藤賢一 『王妃の離婚』  集英社文庫

だいぶ前に読んだ。多分10年くらい前です。
第121回直木賞受賞作。

佐藤賢一氏の作品と言うともう、非常によく練られたエンターテインメントというか、娯楽性の極めて高い歴史小説ということで、洋モノ歴史小説というと第一人者の一人に確実に挙げられます。

当時のもの知らずな私は、この作家の徹底した娯楽性と登場人物の動かし方の妙に、最初読んだ小説からこっち「うわあ世の中にはこんなにすごい人がいるんだ、どれだけがんばっても私にはとても敵わないわあ」と思っていたわけで、そりゃ直木賞だってお取りになる方なんだから土台から違う。
ラノベの西洋ファンタジーに物足りなくなった人にお勧めする作家の一人でもあります。本当に恐ろしいほど読者の立場を知って、歴史上の人物を実に贅沢に動かすのです。そしてそれが全然違和感がない。気が付いたら「わあ、面白かった」と思ってしまうわけで。

無論、佐藤賢一というと「あのエロい描写の」とかいう方もいるらしくて。ええ、まあ性描写はグロイ寸前まで書いていまして、うら若きお嬢さんの中にはちょっと拒絶してしまう人もいるかもしれません。

さて、実は今日ウィキペディアでイギリスのヘンリ8世について少し調べていたらまー、この小説を思い出してしまいました。
この時代の王侯貴族ってのは非情極まりなくて、しかも魔女裁判の時代も引っかかっていたので、王妃でもそうやって殺される時代でした。
この離婚調停はひどい条件が課されていて、しかも裁判は王妃側に勝ち目が殆どない状態です。
主人公の有能な、しかしある問題を肉体に抱えている田舎弁護士は王妃を弁護し切れるのか、それとも、というお話。

じわじわと張られる伏線、仕掛けられる謎、思わぬときに開示され、あっと驚かされる事実。実に素晴らしい、エンターテインメントバンザイ。


でもね、私はこの小説で何が心に残ったって王妃の人物描写なんですよね。
キャサリンが民衆に非常に大事にされた人というのは史実のようですが、佐藤版の王妃は王妃といえど、別に大変な美人でも、男そこのけの才媛というわけでもない。
ただ地味で優しく慎ましやかな、そして平凡な能力の奥方なんですね。
作中に王妃が書類のためにラテン語を訳すシーンがあるのですが、ただの一行もまともに訳せていなかった、という部分があって私は心を打たれたわけです。
今でも読める人の限られるラテン語は、当時知識階級、それも男性中心に学ばれた大変難しい言語でした。
そういう部分がやけに悲しくて、いまだに思い出してはじわじわとくるわけです。

是非お勧めです。春の夜に、どうぞ。

ちなみに、私はこれを思い出して「英国史とか、これ案外、面白いかもしれないなあ……」とか思い出しました。フランス史も、勿論好きなんですけどね。ちょっとこれは、趣味として取り組んでみたくなりましたね。だってハプスブルグ家ってこのあたり凄く鬼畜……、いえゴージャスで役者が揃っているんですもの。

楽しいことをいくつか思いついては、そのたびに実行しないと最近の私は持たないんで、めまぐるしい状態ですみません。

(佐藤賢一『王妃の離婚』 集英社文庫)


にほんブログ村 主婦日記ブログ 40代主婦へ
にほんブログ村
にほんブログ村 主婦日記ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へ
にほんブログ村
[PR]
by kou_ten_nen | 2013-03-23 20:00 | 読書